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ドローンを業務で使用する機材として考えた際に、安全性が不安という方は非常に多くいます。『RTK』(リアルタイム・キネマティック)をドローンに搭載すれば、単純なGPSより精度の高い自己位置推定が可能になり、安全性を大きく向上させることができます。
目次
産業用ドローンの普及
近年、ドローンは従来の空撮用というイメージを抜け出し、産業用としての領域を拡大しています。それに伴い、民間の業務では屋根や壁、太陽光パネル、送電線といった点検が主流となりつつあります。また、自治体でもドローン活用を推進しており、警察・消防での災害支援や捜索救援活動に利用され始めています。
しかしながら、ドローンを業務で使用する機材として考えた際に、安全性が不安という方は非常に多くいます。例えば、ドローンで使用されているGPSは、スマートフォンで使用されているものと基本的な仕組みは同じです。
ニンテンドーのスマホゲーム「ポケモンGO」で遊んだのある方ならお分かりかもしれませんが、GPSは比較的ズレがすぐに発生してしまいます。GPSの狂いによってドローンがどこかに飛んで行ってしまう可能性もゼロではありません。
産業用ドローンの機体はプロペラも大型ですので、万が一点検中の壁や送電線に衝突して損傷させたり、付近の住民に危険を及ぼすような可能性があれば、業務で使用する上で大きな不安要素になってしまいます。
そういった課題を解決するために、現在『RTK』(リアルタイム・キネマティック)というより精度の高い自己位置測位が可能になる技術を搭載したドローンが登場しています。
本記事では、そんなRTK技術のメリットがどういったものかという点について解説を行っていきます。
RTK(リアルタイムキネマティック)とは?
RTK-GPSとは何か
まずGPSとは、宇宙にある衛星を用いた測位システムGNSS(全球測位衛生システム)の一部です。GNSSのうち、米軍が開発したものをGPSと呼んでいます。GPSの類似として、ロシアが開発したGLONASSなどがあり、GNSSはそれらを含む総称になっています。
RTK(リアルタイム・キネマティック)では、GPSやGNSSといったの測位衛星からの電波を受信するだけでなく、地上に設置している「基準局」からの電波を同時に送受信を行うことで、測位の精度を高める仕組みになっています。
では、現在のGPS、GNSSはどれぐらいの精度で動いているかというと、誤差が2メートル前後出ると言われています。これが、RTKによって精度が数センチ単位になることで、産業用途としての安定度が格段に高まります。
図:RTK-GNSS測位方式
(引用:GNSS | 公共事業における情報化施工の概要 – 国土交通省 九州地方整備局)
ドローンに搭載可能なD-RTKの登場
まず、2016年にDJIが産業用大型機体のMatrice600に搭載可能な『D-RTK』という製品を発表しました。その後、測量・点検業務や、消火活動・捜索救援活動といった災害支援まで幅広い対応を想定した産業用機体Matrice200シリーズに、D-RTKをサポート可能なMatrice210 RTKが登場しました。
これによって、一般の民間企業などでもRTKによってGPS精度が格段に高くなったドローンに手が届くようになりました。
加えて、現在PhantomシリーズでもRTKが搭載された機体が登場するのではないか?と噂されており、RTK搭載ドローンはより一般への普及の一途を辿っています。
D-RTKをドローンに搭載するメリット
RTKをドローンに搭載するメリットについて説明していきます。
①現在位置の測位が正確にできる
従来の2メートル前後の誤差が出ると言われているGPSに対して、垂直・水平の方向で1センチメートル単位で正確な現在位置の測位が可能になります。
そのため、産業用途においては、点検などのデータ収集作業において正確な機体の制御を行う必要性がある場合(例:壁面からXセンチ距離を保って撮影)などでも、対象物への衝突のリスクを軽減することが出来ます。
RTKの技術は、今やドローンだけではなく自動運転技術全般に応用されています。例えば、自律駆動の農業用トラクターであれば、GPSだけで動かして数メートルも誤差が発生するようであれば、作物を痛めてしまい基本的に使い物になりません。
同様に、ドローンもこれから産業用に移行するにつれアプリケーションで動くようになります。すると、人力での操作から離れ、自動飛行させる機会が飛躍的に増えて行くでしょう。そういった時に、『自動飛行だと思って放置していたら、誤差でぶつかって機体が墜落してしまった』では済まされないことが起こり得ます。たとえば、以下の画像のようなシチュエーションでは、ドローンの挙動の少しの狂いが大きな損害を生んでしまいます。
また、現在位置の精度が高くなったことで、より正確な位置に着陸を行うことが可能になります。ドローンで救援物資を送る際に、より被災者の近くに物資の投下を行うことが可能になったり、物流で配送先にピンポイントで荷物を届けるといったことが可能になります。
②高度計算もより正確に
ドローンを含めた無人航空機では、高度の計算にレーダー測定などではなく、気圧計を使用していることが一般的です。そのため、DJI GOに表示される高度データは、正確とは言えないの現状です。加えて離陸時や制動時などに気流の変動が発生すると、高度の計算が狂ってしまうことがあります。
これに対して、D-RTKは正確な高度計算を行うことが可能です。誤差1センチメートル単位までホバリング精度が正確になるため、信頼できるデータが得られます。それによって通常の気圧計に比べて正確で高度な機体制御が可能となります。
③機種方位の測定がより精密に
一般的なドローンに搭載されているコンパスセンサー単体よりも、「機体がどちらを向いているのか」という機種方位の表示がより正確になります。
コンパス単体ではなく、2本のアンテナを使って測位情報の受信を行っているため、金属の構造物や高圧電線による磁気妨害を受けづらいのが特徴です。
これによって、機種の方角に安定感を持った飛行が可能になります。
また、建設現場などの撮影では、地面に鉄板が置いてあることが多々あります。その影響で、地上に置いた瞬間にコンパスエラーが発生してしまいます。RTK搭載のドローンを使用すれば、ノーコンで変な方向に行くことが無くなります。
特に眺望・パノラマの撮影を行っていて、方角が分からなくなるコンパスエラーは大敵です。眺望撮影は建設現場で行うことが多いので、コンパスエラーが無くなるのは大きなメリットだと言えます。
D-RTKの導入について
現在、DJIでは『RTK-G』と『RTK-B』の二種類のD-RTKを販売しています。どちらも、測位衛星をGPSだけとの交信だけでなく他の測位衛星と二重にすることで精度を高めています。
RTK-Gは、GPSと前述したロシアのGLONASSを束ねることで、世界中で使用可能な範囲を持たせています。一方のRTK-Bは中国が開発している測位衛星のシステムで、アジアを中心に広がりを見せています。DJIによると、アジア圏でのエリアはRTK-Bの方が精度が高いため、RTK-GよりもRTK-Bを導入するべきというのが現在の見解です。
また、動作に関しては、Matrice600はDATALINK PROというコントローラーとD-RTKを繋げるデータ送受信機器が必要になります。こちらも併せて購入を行いましょう。
また、Matrice200シリーズは、D-RTKの地上システムキット が必要になります。こちらもRTK-BとRTK-Gで製品が違うので、購入する店舗に別途お見積もり下さい。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
機体位置の正確な推定を行うテクノロジーは、今後の自動運転のテクノロジーを牽引する重要な役割を持つと言えるでしょう。
今回紹介したRTKの技術は、今後のドローンの安全運用の主役になっていくものだと思っています。ぜひ、ドローン運用時には正しい知識を持って飛行を行って下さい。