法律違反?ツーリング中のバイクをドローン自動追尾で撮影する問題点とは?

FLIGHTS編集部
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こんな感じの内容です!

ドローンの自動追尾モードを使用して、ツーリング中にバイクで走る風景を撮影したいと思う人は多いです。この記事では、バイク走行の自動追尾で撮影できるかとともに、その危険性と法律違反について説明していきます。

目次

バイクを使って旅を楽しむツーリング。風を切って走る瞬間や、走行中の美しい景色を写真や動画に残したいと思いますよね。


そこで、ドローンの自動追尾モードを使用して、自分がバイクで走っている姿を撮影したいと思う人がいるかと思います。
特にドローン好きの方は、バイクも好きという方が多いので、そう考える方はかなり多いはずです。実際にアクションカメラで撮影を行っている方もいます。

 

しかし、固定カメラでの撮影と違い、バイク走行をドローンで撮影するのはかなり危険です。本記事では、バイク走行を自動追尾で撮影することが「技術的に可能か」を説明した上で、バイク走行をドローンで撮影する安全上・法律上の危険性について説明していきます。バイク走行中のドローン撮影は危険極まりないものであり、絶対にやめましょうと最初に述べておきます。

 

自動追尾モードを使用した撮影

この機能を使って、モトクロスや自転車レース、スキーなどのスポーツを今までに無い迫力のある視点で撮影することが可能になりました。現在では、映画制作やプロモーションなど様々な分野で活躍しています。

下の動画のようにドローンでバイクを追尾して撮影することがどのように出来るのでしょうか?この後に二種類の自動追尾モードである、「フォローミー」と「アクティブトラック」について説明していきます。

(こちらの動画はあくまで海外の動画です。日本では真似をしないようにお願い致します。)

二種類の自動追尾の紹介

フォローミー

送信機を持っている人を追いかけるのが、フォローミーです。これは、言い換えると「送信機に搭載されたGPSを追尾する」という形で、対象を追いかける機能です。

フォローミーの起動には、最低10m以上の高度で飛行していることが条件です。高度10m以上まで飛ばしたら、インテリジェントフライトモードでフォロミーを選んでOKを押すだけで起動します。


デメリットとしては、最低高度が10mということです。これ以下の高度では飛行しません。そのため、やや俯瞰から被写体を追尾することを想定した機能で、撮影した被写体はかなり小さくなります。


フォローミーは位置情報の使用する為、GPSの状況によって影響を受け、追尾の精度が悪くなってしまう場合があることが注意点です。

 

アクティブトラックモード

アクティブトラック機能は、GPS信号で追尾を行うフォローミーとは違い、ビジョンポジショニングによる追尾を行うモードです。時速約50km/hまでの被写体を追尾可能です。

アクティブトラックは自動で被写体と一定の距離を保ち続けてくれるため、今までは大掛かりな道具を使って撮影しなければならなかった映像を安定して撮影できます。


アクティブトラックの一番の大きなポイントは、フォローミーより近い距離で追尾が可能なことです。フォローミーは高度が10m以上でなければ設定できませんが、アクティブトラックは3m以上で機能をオンにできます。また、ビジョンポジショニングが有効なので、途中にある障害物も回避してくれます。

問題点としては、アクティブトラックがステレオカメラで周囲を認識することです。周囲が明るすぎる場合や、暗すぎる場合、または被写体に類似したものが現れた場合などに被写体を見失う場合があります。


また、フォローミーだと送信機のGPSを目がけて追いかけてきてくれますが、アクティブトラックだと機体を見失った瞬間機能が解除されます。すると機体を置いていったり
自動的にRTH状態になったりと、機体をロストする可能性が高くなります。

こちらはスキーを自動追尾モードで撮影した映像になります。アクティブトラックモードの使い方の解説が(英語で)されています。

 

バイク走行の撮影は可能か?

法律や安全面等は考慮せず、純粋に「技術的に言えば」可能です。送信機をバイクに搭載し、速度を抑えて走るなら自動追尾で十分に撮影が出来ます。

 

望ましい撮影の条件は以下になります。

  • 道路左右上空の飛行範囲内に障害物(看板、電柱、家屋、木、ゲート)などが無いこと。
  • バイクの速度は50キロ以下
  • 風速が弱いこと(3m/s以下が望ましい)

 

また、撮影時にはフォローミーではなくアクティブトラックを使用することが望ましいと言えます。その理由を以下で解説します。

 

山での走行を想定した際の注意点

ただし、追尾機能モードは平地ではない場所、特に「峠」での撮影が危険です。


最も気をつけるべきは、フォローミーを使用しないことです。

フォローミーは、送信機に組み込まれたGPSを自動的に追尾するだけで、高度維持もGPSに依存しています。そのため、フォローミー起動時点の高度をGPSで取得しこの位置(一定の高度)をキープしながら飛行するので、地面からの高低差の変化を検知せず、坂で地面に激突することもあり得ます。


峠道だと当然、高低差があります。木の枝が道路に張り出しているところも場所によってはあるでしょう。

「バイクは道路の高低差に合わせて走行」「機体は一定高度を維持して飛行」という状態を続けることを想像してみてください。

上り坂であれば、ドローンは徐々に地面との距離が近くなり墜落します。下り坂であれば、ドローンは徐々に地面との距離が大きくなり、木の枝などに接触。ということが起こり得ます。

高低差のある場所ではアクティブトラックモード

まだアクティブトラックが登場していない時代でも、スノーボードなどをフォローミーで自動追尾させている動画はありました。ただし、あれはスキー場という環境だからこそ撮影出来たものです。


スキー場上空には、障害物がありません。スキーは常に下方向へ滑走するので、フォローミーの場合、雪面との距離は開くだけです。そのため接触せずに済み、安定した撮影が可能だったのです。


上記の理由から、バイクか否かを問わず、山など高低差のある場所で自動追尾を用いた撮影を行う場合は、基本的にアクティブトラックモードを使うべき、ということが言えるでしょう。

 

しかし、安全性・法律上に大きな問題

ここまでは、自動追尾を使用した撮影が「技術的に可能かどうか」、そしてドローンの機能上でのポイントについて説明を行ってきました。


今一度念を押しますと、ここまでは法律や安全上の点についてあえて触れずに解説を行っています。

というのも、実際に公道上でこのようなバイクの自動追尾モードを用いた撮影を行えば、基本的に道路交通法違反に該当してしまい、警察の許認可が必要になります。

また、安全面でも大きな問題を孕んでいます。その点について説明していきます。

道路交通法にどう違反するのか

道路交通法の第76条第3項では、「何人も、交通の妨害となるような方法で物件をみだりに道路に置いてはならない。」と規定がされています。

参考:[“道路交通法“とは?]ドローン関連法をパイロットが解説 ~許可取得の方法まで~

 

まず、ドローンの離発着を道路上で行ってはいけません。安定した場所での離発着が求められるドローンでは、道路や路肩、歩道、橋の上等を使って行う事も多いと思います。その様な場合は、道路使用許可を取得する必要があります。加えて、撮影のために非常駐車帯などに一時停車することも禁止事項に該当します。


そして、公道に沿ったドローン飛行は確実に「交通の妨害」であると言えます。基本的に、一定の高さで道路上をずっと飛ばして撮影する場合であれば、道路使用許可が必要と考えるべきです。

安全面での大きな問題

ツーリングでバイク走行する場所として「航空法の人口密集地域には該当しない場所」を選び、撮影高度も150メートル未満だから大丈夫!と考えてはいけません。

まず、バイクを運転しながらのドローンの飛行は、目視外飛行に該当します。そのため、基本的に走行中の使用は不可と考えて下さい。それに加えて、「人(第三者)又は物件(第三者の建物、自動車など)との間に30m以上の距離を保って飛行させること」という規制にも該当します。基本的に運転中はドローンのコントロールが不可なため、建物や自動車、電柱などに30m以内の距離にまで接近する可能性は十分あります。

[“30m未満飛行“とは?]ドローン航空法 ~許可取得の方法まで~【徹底解説】

その他にも、『アクティブトラックは障害物を勝手に回避してくれる』というのは勘違いです。障害物センサーは電線などの細いものを認識しないため、ドローンは普通に電線に突入していきます。また、自律飛行しているので、カーブの際にドローンがどんな動きするか分からないですし、バイクの音でどこ飛んでるか分かりません。これは危険極まりないと言えます。

電波が遮断されてしまった際も、どこで電波が切れたのかというタイミングも分かりませんし、そのまま気付かずに走り続けると、フェールセーフが効いたのかも分からない状態になってしまいます。これだけ危険だらけだと、ドローンに詳しい人は絶対にやりません。


最悪の場合、アクティブトラックモードで追尾して飛行しているドローンが、対向車に衝突し事故になる可能性は否定できません。
その場合は、道路交通法だけでなく「業務上過失致死傷」という刑法に該当する可能性もあり得ます。もちろんバイクの保険は効きませんし、損害賠償が数億に及ぶ可能性もあります。


バイク走行中のドローンをもし仮に撮影したい場合は、場所を必ず安全な場所に限定すること、ロケハンなどの入念な安全対策を講じること、プロポを誰かに持ってもらい危険を回避できる状態にしておくこと、そして最後に
きちんと警察の許認可を取った上で決行しましょう。それ以外では絶対に実践しないようにお願いします。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回の記事は、「ドローンも飛ばすし、バイクも好き」という方に向けて書きました。そういった人は、恐らく美しい映像が好きで、仲間とのツーリングの時間を楽しむ、純粋な方が多いのではないかと思っています。ツーリング風景を撮影するのは男のロマンではあります。

しかし、バイク走行中のドローン撮影は、今まで述べてきたように数多くの法律に抵触する違法飛行です。ドローンに詳しい人は絶対に行いません。だからこそ、道交法や、目視外飛行や、30m未満飛行など、今まで学んできたドローン法律上の違反知識を改めておさらい出来るケースとして紹介させて頂きました。

ここまで読まれた方は、バイクだけでなく車や自転車でも同様のケースが当てはまることが理解できたかと思います。安全に細心の注意を払った飛行を行い、決して事故を起こさないように気をつけていきましょう。

 

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