産業用ドローンMatrice210の使い勝手は?実際に飛ばして徹底レビュー!

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産業用に特化した機体として登場したMatrice200,210シリーズ。高価なドローンのため、実際に飛ばした実態は皆様気になっていると思います。そこで、Matrice210を実際に飛ばしてみた飛行時性能や、操作感、アプリの使用可否などについてレビューしていきます。

この記事の目次

産業用に特化した機体として登場したM200シリーズ。

全国の消防や警察といった自治体、建設現場などにに導入事例が相次ぐ中、それなりに価格が高いため、実際に飛ばしてどうなのか?使えるのか?という実機検証を行うのがなかなか難しい状況になっています。

そこで今回は、我々DroneAgentの操縦士チームが実際に飛行させてみました。以下は実際にセットアップを行い、飛行を行った際の動画になります。

この時に、操縦士から挙がった実際の声を元にレビューをお届けします。

 

Matrice210の3つの特徴

①搭載可能なカメラの種類の増加

赤外線カメラ

一般の可視光カメラ

 

②カメラの取り付け方のバリエーション

M210の特徴として、カメラを2つも搭載可能であることが挙げられます。これによって、赤外線カメラを機体に気軽に装着できるようになり、産業用途としての幅が格段に広がりました。

 


 

というのも、たとえば一般的な可視光カメラとの切り替え無しで、赤外線カメラだけで飛行を行うと、点検を行う現場までサーマルカメラの温度色の表示の状態で飛ばさなければなりません。機体から正しい映像が届かないので、ディスプレイで見るにしろ目視にしろ危険です。


カメラの切り替えが可能になったことにより、点検の現場までは可視光カメラで操縦し、点検開始のタイミングで赤外線に切り替えるといったことが可能になりました。また、点検の際にいちいちカメラの付け替えで一旦機体を戻さなくても、赤外線を使用した点検と通常画像の点検・測量を同時に行うことが可能です。



また、Matrice210は機体上部にカメラの取り付けが可能になりました。今までのドローンだと、基本的にカメラは機体下部に取り付けられていました。それがカメラが機体上部にも付くようになることで、、点検や撮影を行う対象の下に入り込んでの撮影ができます。インフラ領域を中心に点検可能な領域が広がりました。


なお、M210の上部には赤外線センサーがついています。橋の点検などにドローンを飛ばそうとすると、機体上部は影に隠れて見えづらいという問題がありました。センサーの搭載によって、機体上部の対象を撮影する際でも安心できます。

 

③防水・防塵性能の強化

M200シリーズは、他のDJI機体とは防水防滴性能が強化されているという点で一線を画しています。それが、警察・消防などに導入される大きなメリットとなります。

空撮であればリスケジュールすれば済む話でも、産業用や緊急時の使用には『雨が振っていたから飛ばなかった』が理由にならない場合が数多くあります。カメラは防水にはなっていないのでは、という指摘もありますが、上の動画のように、実証実験でも雨風の中でも十分機能することは明らかになっています。

テスト1:実際に飛ばしてみる

ここまでMatrice200のメリット概要について話してきました。ここからは実際の使用感をレビューしていきます。

(写真:。左から、Matrice210, Inspire2, Phantom4 Proのケースの写真)


まず手に入れて意外だったのは、『産業用機体』という名前からイメージするほど、思っていたより大きくないことでした。ケースに入れれば(車さえあれば)容易に持ち運びも可能です。上の写真を見て頂ければ分かるように、Inspire2より少し横に長いくらいです。

そこで、飛ばす前に『本当に安定性があるのか?』という疑問が弊社の操縦士チームに湧きました。実際に組み立ててみたところ、正直な話機体の足の部分も思ってたより細く感じます。この点も踏まえて、実機での実証実験を行いました。

 

飛行時性能

実験の際、風速5〜7mの風速がありました。しかしながら、Pモード状態で非常に安定したホバリング精度を見せてくれました。安定性に関しては、他機種と比較にならないぐらい安心感があると自信を持って言えます。障害物センサーは他機種と同様の動きと反応で、きちんと障害物に対してブレーキをかけてくれました。

インテリジェントフライトモードでは、タップフライ、ポイントオブインテレスト、ウェイポイント、ホームロック、コースロック、トライポッドモードといったの機能が揃っています。Phantomシリーズなどよりもメニューは少ないですが、どれも問題なく使用可能です。特に、対象の中心を回りながら撮影するPOIは、抜群の安定感を見せてくれました。

なお、飛ばしてみて「カブトムシみたい」という声が挙がりました。プロペラの大きさからか、回転するペラの音が若干低く鳴り、ブォンブォンと音を立てます。飛行そのものは非常に滑らかで、どの操縦士も「飛ばしやすい」と口を揃えました。

送信機(CENDENCE)の操作性

専用のコントローラーであるCENDENCEは重量があります。付属のディスプレイであるCrystalSkyと合わせると2kgほどの重量があり、長時間の運用ではストラップや三脚に立てて使用しないと疲れてしまいます。

肝心のスティック操作に関しては、最初は持ちづらいと感じました。普段Phantom4 Proなどのプロポを使用している人には慣れが必要です。ただし、あくまで許容範囲内であり、すぐに慣れてしまいました。機体自体は動きがスムーズですが、操作に対する反応は若干鈍い印象がありました。

カメラについて

カメラ装着の自由度は本機体の目玉です。しかし、気をつけるべき点がいくつかあります。

まず、デュアルジンバルのオプションは、Matrice200のアクセサリーとして普通に販売されておりますが、取り付けできません。あくまでカメラ2つのデュアルジンバルはMatrice210、Matrice210RTKでしか出来ないということを覚えておきましょう。

また、デュアルジンバルもカメラの取り付けの位置が決まっています。Iには、X4、X5S、XT2、XT、ⅡにはZ30を取り付ける仕様になっています。

上部にカメラを装着する場合は、端子がむき出しになること・カメラ自体が雨ざらしになることもあり、雨に弱くなって防滴性能が保障されないことにも気をつけましょう。

なお、カメラは空撮用でDJIの最上位カメラX7は搭載が不可能なようです。そのため、この機体をそのまま空撮用に使用することは不向きに設計されているようです。

空撮用はInspire2というほとんど専用の機体があるので、映像を作る時はそちらで。という棲み分けを行っているのでしょう。X5は搭載可能なので、点検時の画像の撮影などはX5で基本的に行うことになります。

テスト2:アプリは正しく機能するか?

CENDENCE × iPadでの検証の必要性

Matrice200シリーズでよく指摘されるのは、『専用のコントローラーであるCENDENCEには基本的にCrystalSky(熱・寒さ・光に強いモニター)を使用する。ただし、CrystalSkyは、DJI GO以外のアプリに対応していない。そうなると点検・測量用のアプリケーションなどは使えないよね。』という点です。


この点は、我々機体販売を行っている身としては非常に大きな問題でした。最初セットとなっている送信機のCENDENCEは、付属のモニターCrystalSkyではなくiPadを取り付けることも可能(※別売りのコネクタが必要)なので、
CendenceからUSBでiPadを使い、各アプリどこまで使えるのか?という点について検証してみました。

DJI GO

普通に使うことができました。ただし、Cendence+CrystalSkyと同時には使えません。一度CrystalSkyを外してiPadに付け替える必要があります。

そのため、DJI GOの範囲で出来る操縦を行う場合はCrystalSkyを、アプリを使用する場合はiPadを使い分ける必要があります。

GS PRO

こちらも普通に使うことが出来ました。カメラがなかったため、計測撮影モードでの飛行は出来ませんでしたが、ウェイポイントが動いたので、計測撮影も動くはずです。バーチャルフェンスもきちんと機能しました。測量系で使う人が買っても問題がないというのが結論です。

Litchi

Litchを起動した状態で手動で飛行させることは出来ますが、パノラマ撮影等の自動航行は不可という結論になりました。


ウェイポイント作るところまでは可能ですが、スタートしようとすると、『要件を満たしていません。航空機が接続されているRCをFモードに切り替える事を確認します。』のメッセージが表示される現象が発生。Matrice210にはFモードがないので、LitchiがM210を認識していないのが原因と考えられます。

Pix4D Mapper

こちらはやはり、使えませんでした。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

さすがDJIが力を入れて売り込みを行っているだけあって、他の機体よりかなり安定した飛行を見せてくれました。心配していたアプリ面も、Pix4Dなどは使用不可ですが、GS Proが使えるというのが分かったため測量系で使う人も問題なしという判断です。

結論として、自信を持ってオススメできる、素晴らしい機体です。企業などで導入を考えていらっしゃる方にも、安心して導入をオススメできることは弊社としても非常に嬉しいことです。

本機体は、しばらくの間産業用のスタンダードの機体となるでしょう。今後もますます産業用ドローンが普及していくことを願っています。

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